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Author:大矢アキオ (Akio Lorenzo OYA)

イタリアコラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒業。自動車誌『SUPER CG』編集記者を経てトスカーナ州シエナ在住。『イタリア発シアワセの秘密-笑って!愛して!トスカーナの平日』(二玄社)ほか著書多数。NHK『ラジオ深夜便』現地リポーターとしても十年以上にわたり活躍中で、老若男女犬猫問わず幅広いファンがいる。

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ゴルフの「路上販売」
150106-Oya-04.jpg【イタリア直送 大矢アキオのかぶと虫! ビートル! マッジョリーノ!】

イタリアでは、路肩やスーパーマーケットの駐車場などに「VENDESI」の貼り紙とともに、クルマが置かれていることがある。ヴェンデシとは「売りたし」の意味である。自分のクルマを売りたい人が、人目につく場所に車両を置いておくのだ。

イタリアに、日本のような中古車買い取り専門店は原則として存在しない。さらにディーラーに下取り車として出すと、査定価格は個人売買より一般的に約1500ユーロ安くなってしまう。そこで、多くのイタリア人は個人売買に賭けるわけである。

ウインドー越しに掲示しておく貼り紙は、文房具店で売っている汎用のものが使われることが多い。イタリア人が、家を売りに出すときにも使うやつだ。

写真はこの冬、ボクが住むイタリア・シエナから30kmほどのところにある生協の駐車場で発見した2002年式フォルクスワーゲン・ゴルフ4 GTDである。

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貼り紙を読むと「エアコン、パワーウィンドー、アルミホール」とオプションが綴られている。続いて記されているTagliandata(タリアンダータ)とは、定期整備を受けてきたことを示す。総走行距離は19万キロ。日本だったら、それを見ただけでちょっと"引く"数字だが、こちらでは、さして珍しいキロ数ではない。

他の多くの路上「売りたし」グルマ同様、このゴルフ4も価格は明示されていない。税務当局の目を恐れてという売主もいるだろうが、それ以上に「いくらくらいかな?」という興味をもって電話をかけてくるのを目論んでいるのである。

イタリアでは、一般商店でも一定価格以上の商品だと値札が見えないように向けられていることが多々ある。「まずは入店してもらうこと」を狙っているのだ。腕時計店などが良い例だ。どんなものでも価格がバッチリ記されているドイツとは異次元の商習慣である。

参考までにこのゴルフGTD、イタリアの中古車販売店検索サイトで同年式・同型車を検索すると、2900ユーロ(42万円)といったところだから、オーナーの口からは、それよりもう少し安い価格が提示されることだろう。

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こうした個人売買車はイタリアの中古車販売店に義務づけられている最低1年の保証など付与されない。この地でクルマ名義変更の際、必ず行かなければいけない公証役場など、面倒な諸手続きも含まれない。それでも、人々は友人・知人間も含め、クルマの個人売買を好む。あるデータによると、イタリア人の中古車購 入者の6割が個人から買っているという。

最大の理由は前述のとおり安さだからだが、イタリア人ならではのメンタリティもある。思い出すのは、17年前ボクがイタリアで最初のクルマを個人売買で手に入れたときだ。

拙い(つたない)イタリア語しか話せず、今以上にビンボーなボクだったにもかかわらず、売り主のおじいさんは真面目に価格交渉の相手をしてくれた。商談設立から数日後、公証人役場には奥さんまでやってきて、新車のころ、うれしくてドロミティ渓谷まで旅した思い出や、クルマで送り迎えした幼い娘の話をたっぷり聞かせてくれた。

すべてがそうというわけではないが、イタリア人はクルマを売買するときそうしたヒューマンライクなやりとりも楽しんでいるのは、たしかだ。

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だから、こうした路上の「売りたしグルマ」を見つけるたび、現オーナーはどんな人なのか、思わず想像をめぐらせて楽しんでしまうのである。

(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)
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