2012年11月末のロサンゼルスショーでデビューしたザ・ビートル カブリオレが、早くも日本に上陸。3代目はどんな仕上がりなのか、ニュービートル カブリオレのオーナーだった生方編集長がチェックする。

※2013年3月の記事を再構成して掲載しました。

画像1: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

ニュービートル カブリオレが日本で発売されたのは、2003年6月のこと。その直後、僕は"アクエリアスブルー"のニュービートル カブリオレを手に入れた。

あれから10年、3代目となるザ・ビートル カブリオレが日本にやってきた。ザ・ビートルをベースに、フォルクスワーゲンの最新技術を詰め込んだカブリオレである。

画像2: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

当然、ニュービートル カブリオレに比べると、さまざまな部分が進化している。たとえばソフトトップの開閉。開閉そのものはスイッチを操作するだけだが、ニュービートル カブリオレではその前後に、レバーを使ってソフトトップをロック/アンロックする必要があった。これがなんとも操作しにくく、初期のモデルではレバーを破損することもあったと聞く。

ザ・ビートル カブリオレでは、そんな面倒な操作から解放され、ソフトトップのロック/アンロックは自動的に行われる。さらに、走行中でも50km/h以下ならソフトトップの開閉操作ができるというから、これは便利である。ただ、メーカーとしては走行中の開閉を推奨しているわけではなく、できるかぎり停車した状態で操作してほしいと、取説には書いてあった。

画像3: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

さっそくソフトトップを開けると、"Design"専用のインテリアが目を楽しませてくれる。ハッチバックのザ・ビートル デザイン/デザイン レザーパッケージ同様、インパネやドアトリム、ステアリングホイールのスポーク部などがボディカラーと同色になるのだが、ソフトトップを開けるとエクステリアとインテリアの境界がなくなるカブリオレでこそ、その効果は大きいのである。

ドライバーだけでなく、ギャラリーの目をも楽しませてくれるザ・ビートル カブリオレのインテリアは、退屈なデザインで溢れる日本の道路には貴重な存在となるに違いない。

画像4: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

だだっ広いダッシュボードが普通の広さになり、また、インテリア各部の質感が向上したのはハッチバックと同様だ。エアコンは、ハッチバックの上級グレードに備わるフルオートタイプが装着されるが、ソフトトップを開けたときと閉じたときとで、それぞれ設定が記憶されるので、開閉のたびに調整し直さなくて済むのが便利だった。

リアシートの居住性も明らかに向上した。ニールームはさほど変わらないが、ヘッドルームは多少拡大。さらに、ニュービートル カブリオレではほぼ直立していたシートバックが、このザ・ビートル カブリオレでは多少角度がついたことで、大人でもあまり窮屈な思いをせずに座れるようになった。

画像5: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

トランクスペースは225Lで、ニュービートル カブリオレに比べて24L拡大している。しかし、数字以上にうれしいのが、リヤシートが従来の固定式から分割可倒式になったおかげで、いざというときに長尺物が収まるようになったこと。トランクの間口は狭いが、見た目以上に荷物が収まるようになった。

ちなみに、 リヤシートを倒すにはトランク内のレバーを操作する。シート側にレバーがついていたほうが楽なのだが、それではソフトトップを開けたまま駐車する場合にラゲッジスペースのセキュリティが保てない。オープンカーならではの工夫といえる。

デザインや使い勝手の点で、確実に進化しているザ・ビートル カブリオレだが、ソフトトップを閉めたときの斜め後方の視界はいただけない。ナビゲーションシステムが標準なので、リアビューカメラに期待したが装備リストにはなく、ニュービートル カブリオレで装着されていたリアのパークディスタンスコントロールも装着されず......。

画像9: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

果たして、ザ・ビートル カブリオレの走りは、そんな不満を吹き飛ばしてくれるだろうか?

ハッチバックのザ・ビートル デザイン/デザイン レザーパッケージの車両重量は1280kg。これに対して、ザ・ビートル カブリオレはプラス100kgの1380kg。

大丈夫かなぁ......。そんな不安を胸にザ・ビートル カブリオレのコックピットへ。

ボディカラーがデニムブルーの試乗車は、室内もデニムブルーのパーツで彩られている。ソフトトップを開け放つと、その鮮やかさがなおいっそう印象的だ。ブルー好きの僕にはたまらない演出......。巷では白や黒のボディカラーが好まれているが、ザ・ビートル カブリオレを買うなら、流行よりも自分の好きな色を選びたい。

画像10: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

さっそく走りだすと、100kg増と聞いて不安に思う気持ちがすぐに吹き飛んだ。1.2 TSIのスペックも7速DSGのギア比もハッチバックのザ・ビートルと同じだが、とても活発に走るのだ。

画像11: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

とくに低回転での力強さ、そして、アクセル操作に対する反応の良さは格別で、フォルクスワーゲンの最新エンジンを知らない人なら「これが1.2L? これがターボ?」と驚くに違いない。高速道路の合流などでも遅いと感じることはなかった。

SOHC2バルブエンジンということで、高回転の伸びはいまひとつだが、それでも4000rpmを超えたあたりまで豊かなトルクを発揮するこの1.2 TSIは、実用上の不満はまずないといえる。

画像12: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

ちなみに、100km/h巡航時のエンジン回転数は7速で2000rpmを少し上回るくらい。その際の燃費は17km/L前後となかなかのものだ。都内だけの走行でも10km/Lを下回ることはなく、その点でも10年前のニュービートル カブリオレとは隔世の感がある。

画像13: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

それ以上に進化を実感したのが、ザ・ビートル カブリオレのボディやシャシーだ。ニュービートル カブリオレは、当時のレベルとしてもボディは緩めで、いろんな部分がバラバラに動いている......という印象があった。それに対し、ザ・ビートル カブリオレはボディに一体感があり、バラバラに動いているという印象が薄れている。とはいっても、ゴルフカブリオレに比べるとボディのしっかり感は足りないのだが、このクルマのキャラクターを考えると十分に許せるレベルなのだ。

乗り心地はやや硬めで、また、タイヤが拾う路面の荒れがフロアに伝わるなど、多少気になるところもある。しかし、16インチタイヤとリアの4リンクサスペンションのおかげで路面からの突き上げなどはよく抑えられており、十分快適に仕上がっている。山道などを走ったときの印象も悪くなく、スポーティというほどではないが、しなやかに動くサスペンションのおかげで、コーナーを気持ちよく駆け抜けることができた。

画像14: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

肝心のオープンエアモータリングだが、試乗した日は気温が低く、サイドウインドーを上げても50km/hくらいから風の巻き込みが目立ってくるキャビンは、空調やシートヒーターだけでは寒く、オプションの"ウインドブレイク"を用意したいところ。高速をオープンで走りたいならウインドブレイクは必須アイテムだろう......というか、これは標準装着してほしい。

一方、暖かい日は、一般道を走る程度であれば、キャビンを吹き抜ける風は心地よく、サイドウインドーを下ろしてオープンエアの楽しさが満喫できた。

画像15: 【試乗記】ザ・ビートル カブリオレ[再]

ということで、楽しく快適なクルマに仕上がったザ・ビートル カブリオレ。個人的にはハッチバックよりこのカブリオレのほうが魅力的に思えるのだが、皆さんはいかがだろう? 

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hiroyuki Ohshima)

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