あの東京都庁ビルの外壁には、イタリア製大理石が使われているのをご存知だろうか。その産地であるカッラーラは、筆者が住むシエナと同じイタリア中部トスカーナ州にある。

県内には見学できるダイナミックな採石場もあって、内部は夏でも15℃前後だ。

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少し前のこと、女房の取材のお供でカッラーラへと赴くことになった。参考までに女房・大矢麻里は、その食欲に任せるままイタリアの食とカルチャーについて書いている物書きである。2018年12月には3冊目の本である『ガイドブックでは分からない 現地発!イタリア「街グルメ」美味しい話』を世界文化社から上梓した。

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カッラーラは、大理石とともに「ラード(ラルド)」で有名である。ラードというと日本では餃子に使うものを思い出してしまうが、イタリアでいうところのラードとは、豚の背脂に塩、コショウ、ハーブを擦り込んで半年熟成させたものを、薄く切って食べるものだ。熟成に用いる容器は“呼吸する石”大理石である。

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当地の有名な家族営業のラード工房「ジャンナレッリ」で取材していると、庭に真新しいフォルクスワーゲンの商用車「クラフター」が現れた。運転してきたのは店の主、サンドロさんであった。

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クラフターについて説明しよう。同車は、フォルクスワーゲンの商用車部門が1970年代から生産してきた「LT」の後継車として2006年に誕生したモデルである。

初代はメルセデス・ベンツの商用車「スプリンター」とシャシーを共有し、生産もドイツ国内のダイムラー工場で行われていた。いっぽう2016年に誕生した現行型はダイムラーと関係なく、ポーランドの工場で生産されている。
エンジンは2リッターTDIディーゼル(102-177HP)で、変速機は6段マニュアルと8段自動がある。4モーション仕様も用意されている。イタリアでの価格は3万2600ユーロ(407万円、付加価値税別)からだ。グレードによっては、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシストシステム、クロスウインド(横風)アシストといった先進安全装備も選択できる。

なお、フォルクスワーゲングループの重商用車部門「MANトラック&バス」には、クラフターの姉妹車「TGE」が設定されている。

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サンドロさんのクラフターに話を戻そう。彼の車は、冷蔵車仕様である。ラードの素材となる豚の背脂を運ぶ必要があるためだ。フォルクスワーゲン製キャブシャシーとは別に、冷蔵用荷台はトスカーナ州プラトにある「ヌォーヴァ・メタルプラスト」社製である。

別注するのかと思いきや「すべてフォルクスワーゲン販売店が仕切ってくれるんだよ。納期は2カ月だった」と彼は説明する。

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新車の香り漂うダッシュボード上には、冷蔵庫のコントローラーが付加されていた。

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荷台内部を見せてもらうと、外観・キャビン同様ぴかぴかである。なんと「たった今、販売店から引き取ってきたばかりなんだ」という。「でも、セールスの説明は至極簡単だったよ」。

それもそのはず、サンドロさんは、この車の前も初代クラフターを25万kmにわたり使用していたのだ。

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ところで冷蔵庫部分のサイドパネルには数字が記されている。イタリアですべての冷蔵車に記されているそれを日ごろから疑問に思っていたので聞いてみると、サンドロさんは詳しく教えてくれた。

最初のFはイタリア語のfreddo(冷たい)の頭文字、つまり冷蔵車を示す。RCXは0℃まで冷やす性能があることを示す略号だ。そして07-2024は、陸運局による次の冷蔵性能検査期限(2024年7月)を示している。その後も3年ごとに検査を受ければ使用が許される。

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しかしながら、数ある商用車の中でサンドロさんがフォルクスワーゲンクラフターを2台にわたって選んだのには、もう一つ理由がある。周辺の道では、採石場と加工場を往復する大きなダンプトラックが日夜を問わず走り回っている。彼らと伍して走るには、十分なトルクと堅牢さを備えたクラフターが最適なのである。

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日本ではあまり馴染みがないフォルクスワーゲン商用車シリーズだが、ヨーロッパでは毎日厳しい環境で使用するサンドロさんのようなユーザーから、熱烈な支持を得ている。いわば最もマジなフォルクスワーゲンなのである。

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そういう筆者は、「サンドロさんの熱い語りを思い出さなければならない」という口実で、残っていた貴重なラードを次々と平らげてしまい、女房からこっぴどく怒られたのであった。

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(文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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