090419ogu008.jpgこれから書くことは、あるいはオグラの単なる妄想、もしくは片思いのようなものかもしれない。しかし、そこには確たるものも必ずあると思うのだ。
フォルクスワーゲンとは、いうまでもない、"国民車"という意味である。この自動車メーカーが生まれた経緯はご存知の通り。が、結果として、それは唯一の正の遺産となって、戦後のドイツ復興の一端を担うことにもなったこともご存知の通りだ。まず、フォルクスワーゲンの根っこはここにある。「ドイツ国民のためのクルマを造る」という姿勢である。当然、現代においては、「ドイツ国民のため」だけではないが、その姿勢は変わらない。低価格で質の高い、耐久性のある(長く使える)クルマを提供する――この基本理念だ。

090419ogu006.jpgたとえば、エンジンだ。フォルクスワーゲンは長い間、ゴルフⅠ以来のカウンターフローSOHCの8バルブ直4を使ってきた。欧州メーカーのほとんどが、クロスフローDOHC16バルブを使うようになった'90年代、ゴルフⅢの時代になっても、基本エンジンはカウンターフローSOHC。旧式ではあっても要求条件を満たし、コストパフォーマンスに優れていればそれでよしといった合理性が、そこにはうかがえた。Ⅳの時代には、いきなり気筒当たり5バルブのDOHCとしたが、なにを反省したのか、やがてSOHCの8バルブに戻す。で、Ⅴになると量産エンジンへの採用は困難とされた直噴を採用、ミッションはATさえ6速に多段化。

090419ogu005.jpgその後期にはダウンサイジングというコンセプトを掲げて1.4リッターTSIエンジンを、画期的なミッション、DSGとともに導入する。驚くのは、これらの最新テクノロジーをゴルフという世界でもトップクラスの量産車であるゴルフに用いたということで、動力性能はもちろん、燃費にも、環境性能の向上にも役立てていることなのである。ちなみに、TSIはTDI開発過程に生まれた考え方をガソリンに応用したものとされ、この技術は、近未来に登場する、内燃機関にまつわる排ガス問題を解決する次世代燃料に繋がっている。あまり表には出さないが、フォルクスワーゲンは将来を見据えた技術開発を連綿と、ちゃんと行なってきているわけで、このあたりが本当にスゴイ。

090419ogu009.jpgもうひとつ、フォルクスワーゲンの本拠地、ウォルフスブルグの風土も、ゴルフのキャラクターといったものに少なからず影響を与えていると思う。ドイツは基本的に、質実剛健を旨とするプロテスタントの国で、とりわけ北ドイツには、長い冬が忍耐強さを培ったものと思われるが、享楽をよしとしないストイックな生活態度をとる人が多いとされる。したがって、実力はあっても、自身を装って派手なことをするというのは性に合わず、ごくごく控えめでおとなしいという性格が一般的で、逆にいえば、無口、とっつきにくいという面も併せ持つとされる。しかし、仲良くなってしまうと、今度は強い絆で結ばれるという。

090419ogu007.jpgこれをフォルクスワーゲンのクルマにあてはめてみよう。ゴルフにしたって、実際のところ、スマートというわけでもないし、特にスタイリッシュというわけでもない。高級感の出し方も、得意とはいえない。最近は少しはうまくなったようだが、ミュンヘンやシュツットガルトのメーカーにはまだ負けている。やや薄れたものの、ゲルマン的な骨太感も強く、我々日本人には少し慣れを要するところがある。が、どうだろう、一旦慣れてしまうと、そうした無骨なところがえもいわれぬ信頼感といったものを生んではいないだろうか。とっつきにくかったヤツが、いまや切っても切り離せない相棒になってたりしないだろうか。

090419ogu010.jpgスタンスのよさも見逃せない。シュツットガルトのクルマはどこか権威主義的で、ミュンヘンのクルマはどこかスノビッシュ。両方とも、いってしまうと、上から目線のクルマだ。しかし、だからといって、ゴルフは彼らを羨ましげに見上げたりはしない。「オレはオレ」であって、独自のクラスレスの世界を創っている。オーナー氏にしてみれば、等身大感覚で、片意地を張ることもなく、リラックスして乗ることができるということでもある。とはいえ、ここ日本では、ゴルフは輸入車であって、少なからずプレミアムだ。このため、やや微妙なところではあるが、自尊心をくすぐられながらも、背伸びをしていない、無理をしていない自分を表現できる、実に希有なクルマともいえるのだ。

だから、フォルクスワーゲン。だから、ゴルフなのである。

ウーン。まだ書き残したことがあるような......。

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