090517ogu004.jpgゴルフ6のエンジンは、いまのところ2種類。いずれも1.4リッターのTSIで、ハイラインには、ツインチャージャーの最高出力118kW(160ps)/5800rpm、最大トルク240Nm(24.5㎏-m)/1500~4500rpmを、コンフォートラインにはシングルチャージャーの90kW(122ps)/5000rpm、200Nm(20.4㎏-m)/1500~4000rpmが搭載されている。スペック上、高性能なのは、もちろんハイライン用のツインチャージャーだが、体感上は、コンフォートライン用のシングルチャージャーも捨てがたく、これがなかなか優劣つけがたい。
090517ogu017.jpgハイラインのツインチャージャーはすでにゴルフ・ヴァリアントに搭載されて登場済みの160ps仕様。ゴルフ5のGT TSIのツインチャージャーは170ps仕様だったが、最大トルク許容量が湿式クラッチの6速DSGより少ない乾式クラッチの7速DSGを搭載するため、10psのパワーダウンとなった。が、ギアが1速増えたというメリットは、10psのパワーダウンを相殺してあまりある。実は最大トルクの24.5㎏-mというデータはまったく変わらずで、ということは多段化で加速性能が向上、燃費も向上すること推測されるからだ。

090517ogu008.jpgこのエンジン、実力はNAの2.3~2.4リッター級。低回転域からトルクが豊かで、普通にアクセルを踏み込んでいくと、7速DSGが実にスムーズなギアチェンジを次々と繰り返して、60㎞/h前後でもう7速に入ってしまう。逆に、アクセルを一気に踏み込んでフル加速を試みると、タコメーターの針はレッドゾーンの始まる6000rpmを超えて回り、たちまち高速道路の制限速度を遙かに超える速度域に達してしまう。0~100㎞/h加速は8秒ジャスト(ドイツ仕様)で、最高速度は220㎞/hにも達するのだ。ちなみに、7速はハイギアード化されていて、100㎞/h走行時のエンジン回転数はわずか2100rpmに過ぎない。巡航燃費のよさも期待できるというわけで、ここでも7速DSGの有難味が分かる。

090517ogu002.jpg一方、コンフォートラインのシングルチャージャーは、ゴルフ5のトレンドラインに搭載されていたものがそのまま使われる。たかだか122psと思うなかれ、最大トルク20.5㎏-mはⅤのデビュー時のFSI 2.0リッターエンジンと同じ値で、その実力はNAのまさに2リッター級。7速DSGがこの太いトルクををうまく引き出して、なんら不満のない加速をみせる。0~100㎞/h加速が9.5秒、最高速度が200㎞/h(いずれもドイツ仕様)と聞けば、十分な性能の持ち主であることがお分かりになるだろう。

090517ogu007.jpgそこで、注目したいのは、エンジンのフィーリングの違いだ。フォルクスワーゲンのエンジンは、昔から"縁の下の力持ち"的で、特に出しゃばったりすることもない性格。これは、このふたつのエンジンも変わるものではなく、特にツインチャージャーはほとんどその存在を意識させない。高回転域まで直線的に回転上昇していく様は見事なもので、気持ちのよいものだが、聞かせる音は一本調子で、官能性にはやや乏しい。しかし、シングルチャージャーの方は、低く抑えられてはいるものの、咆哮らしきものを聞かせて少しは存在を主張するから、ツインチャージャーよりはエンジンを回しているという実感がある。

090517ogu021.jpgこれはまた、アクセルペダルの感触も、そういう印象を持たせる要因になっているかもしれない。ツインチャージャーの方は、あえていえば靴とアクセルペダルの間に薄いスポンジが入っているような感触。シングルチャージャーの方は、NAほどではないにせよ比較的素直にアクセルペダル操作についてくる感触。ツインはスーパーチャージャーとターボチャージャー、シングルは小径ターボチャージャーのみという差、つまりエンジン制御の難しさがこの違いを生んでいるように思われる。絶対性能はともあれ、運転していて気持ちがいいのは、コンフォートラインのシングルチャージャーのほうだ。

090517ogu020.jpgとはいえ、いずれのエンジンも、高性能であることは間違いない。ダウンサイジング・コンセプトを実現するために、これまでは最高出力、最大トルクを得るために用いられてきたスーパーチャージャーやターボチャージャーを、走行性能をちゃんと確保しながら時代の要請である燃費と排ガスの良化のために使っている。燃料消費率(10・15モード)は、コンフォートラインが16.8㎞/ℓ、ハイラインが16.2㎞/ℓ。エココンシャス、あるいは地球への優しさという観点で、ハイパフォーマンスといえるエンジンなのである。

090517ogu022.jpg8speed.netの長期テストカー、ハイラインは前述したように、最初からスムーズな走りを見せていた。エンジン、サスペンションともにフリクションらしきものを感じさせず、実に滑らかな作動。当初、ナラシを意識して、エンジン回転数を抑えていたのだが、これだけスムーズならばその必要もおそらくないと、ごく普通の走り方に切り替えた。それでも、677.3㎞を走行した時点で給油すると、48.5ℓ入って、燃費は14.0㎞/ℓ。もっと燃費を意識した走り方をしたなら、さらに伸びること確実。スゴイと思う。

改めて、ゴルフⅥが高性能車であることを実感したわけだ。

(Text by M.Ogura)

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