ドイツのミュンヘン空港は、その名を「フランツ・ヨーゼフ・シュトラウス空港」という。

著名人にあやかった空港名は数々あれど、高校世界史の試験に出てきた記憶はない。音楽家もドイツの「リヒャルト・シュトラウス」もしくはウィーンの「ヨハン・シュトラウス」である。

Franz Josef Straussが誰かと思い調べてみたら、「旧西ドイツの閣僚および元バイエルン州」の首相であった。1915年生まれ・1988年没である。時代的には新潟空港が田中角栄空港になったようなものであると考えてよい。

ミュンヘン空港には2つのターミナルがある。多くの日本人が利用するのは、スターアライアンス系航空会社が発着する、2003年にオープンした第2ターミナルだ。

とかく世界の空港はターミナル間がひどく離れているものだが、ミュンヘン空港の場合、双方のターミナルは広場「ミュンヘン・エアポートセンター(MAC)」で繋がれている。

その広場では毎年11月中旬から12月下旬までクリスマス・マーケットが展開される。ムードは街中さながら。屋台からはホットワインやクヌーデル(ドイツ風肉団子)の湯気が立ち上る。中央に据えられる仮設スケートリンクからは子どもたちの歓声が絶えず聞こえてくる。

画像1: ライバルの聖地ミュンヘンでAudiが大暴れ!?

残念ながら本稿が公開される頃にはクリスマス・マーケットは終了している。だが、Audiファンにとっては、この広場はいつ訪れても楽しい。

ひとつは広場に面したAudiのショールーム「Audi Forum」だ。メーカー資料によると、面積は700平方メートル。2016年にはリニューアルが施され、VRを用いたアトラクションを楽しめる。下の写真で奥のネオンにあるように「Audiコンファレンス・センター」と名付けられた最大120席の会議スペースも存在し、空港に隣接してAudiのディーラー向けトレーニングセンターもある。

画像2: ライバルの聖地ミュンヘンでAudiが大暴れ!?

しかし空港利用者の誰もが目を奪われるのは、広場に面した第2ターミナルの外壁だ。Audiが年間を通じて巨大広告で覆っている。2011年にはグラフィティ(落書き)アーティストをフィーチャー。スプレーペインとクレーンを使ってAudi A7をフリーハンドで描くパフォーマンスも行われた。

画像3: ライバルの聖地ミュンヘンでAudiが大暴れ!?

Audiの本拠地インゴルシュタットは空港と同じバイエルン州であるが、こと空港においては、あのミュンヘンのライバルの存在が霞む勢いだ。もちろん空港ターミナル内にも、Audiの実車が置かれていて、もはやライバルの聖地ジャックといった感さえある。

画像4: ライバルの聖地ミュンヘンでAudiが大暴れ!?

広場のAudiの外壁広告はヘッドライト部分が“点灯”することでも有名である。テレビ業界でいうところの「火入れ」だ。

2018年からは「短距離・中距離・長距離。いまフルエレクトリック」のコピーとともに、ブルーのAudi e-tronを真正面から写したものが掲示されている。

2018年10月に訪れたときは明るかったので確認できなかったが、12月中旬に再訪するときちんとライトが点灯し、仮設スケートリンクの上で輝いていた。

画像5: ライバルの聖地ミュンヘンでAudiが大暴れ!?

日本で首都圏在住者ならおなじみの「西八王子 きぬた歯科」の規模でAudiが同様の広告を世界展開してくれれば、街はかなり明るくなるのではないか、などと考える今日このごろである。

広場にはフォルクスワーゲン タイプ2をアイキャッチにした常設ビアレストランもある。こちらは残念ながら個人的にビールが苦手なので省略するが、隣にはドイツ在住者なら誰でも知っているスーパーマーケット「EDEKA(エデカ)」も店を構えている。

画像6: ライバルの聖地ミュンヘンでAudiが大暴れ!?

空港内といえば、街から隔絶されていることに乗じて、ときに「ぼったくりかよ」と怒りたくなる価格の商品に遭遇する。しかしこのエデカは、市街の店舗に限りなく近い価格で食料品が手に入る。

だからボクはミュンヘンに降り立つたび、エデカで粉末トマトスープや、おやつソーセージ「BiFi(ビフィー)」といった食品を買い込む。「うまいものがあるイタリアに住んでんだから、そんなもの手を出すなヨ」とドイツ人に言われそうであり、後者は独特の匂いから飛行機内で開封するとかなり怪しまれる。

だがいずれもアルプスを越えてイタリアに入った途端に入手しにくいから、そそられるのである。

画像7: ライバルの聖地ミュンヘンでAudiが大暴れ!?

そうしたくだらん買い物をしているうちに、Audiフォーラム自体は18時の閉館時刻を迎えてしまう。だから実をいうと、いまだ館内に足を踏み入れたことない筆者なのである。

(文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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