160111-CES-14.jpgAudiは1月6日から9日まで米国ラスベガスで開催された家電・エレクトロニクスショー「CES2016」にブース出展した。昨2015年は自動運転車を会場に登場させて話題を呼んだが、今回はより個々の技術にフォーカスしたものとなった。 インパクトを追求したがる欧米メディアが真っ先にこぞって取り上げたのは、「Audiフィットドライバー」と名付けられたプログラムだ。これは「Audiに乗り込む前よりも、運転後に車両を降りたときのほうが体調良好になっている」ことを究極の目標として、ヘルスケア技術を追求してゆくものだ。個々の具体的技術については今回提示されなかったが、モットーは「Audiが私の健康管理をしてくれる」である。

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2015年フランクフルト・ショーで公開された「Audi e-tron quattro concept」がディスプレイされた会場では、発売間近もしくは近未来の技術が多数展示され、実際に体験できるようになっていた。

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たとえばAudiのカーエンタテインメント・システムに投入される純正タブレット端末だ。OSはアンドロイド5.0「ロリポップ」で、重さは830gと一般的なタブレットより少々重い。

しかしエンジニア氏によると、ディスプレイ表面には、差し込む光の条件が刻々と変化する車内での視認度を徹底的に追求したアンチグレア処理が施されており、かつユニット全体は世界一厳しいとされる米国の衝突安全基準に適合している。気象条件が厳しい米国各地での使用にも耐える仕様となっているという。

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いっぽう有機EL(OLED)を採用したダッシュボード・コンセプトは、2年以内に採用される技術を示唆するものだ。2面で構成されるディスプレイは、手を振り払うジェスチャーで助手席側の表示画面を瞬時にして運転席側に移動させることができる。展示品はサムソンによるパーツが使用されているが、生産型サプライヤーは未定という。

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なお一角には、より近い将来に生産車に搭載されるジェスチャーコントロールの体験コーナーも設けられていた。ナビゲーション操作は、じゃけんでいう「パー」でスクロール、「グー」で決定といった具合だ。

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またコンセプト・コクピットのエアコンコントロール部分はタッチパネルでありながら、指にフィードバック(具体的には静かなバイブレーション)を与えることで、より確かな操作感を与える工夫が施されている。

Audi関係者によると、これらの技術が導入されるのは「次期Audi A8が最初。以降モデルチェンジのサイクルがやってくるモデルに順次投入される」とのことだ。

ブース後方に設けられた"暗室"は、最新の照明テクノロジーを紹介するコーナーだ。

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有機ELを使用したテールランプユニットはオスラム社との共同開発によるもので、今夏発表される「Audi TT RS」から採用される。リアエンド部分だけがディスプレイされて赤い光を発するさまは、まるでティザー映像である。使用される有機ELパネルは現在のところ基本的に平面だが、将来は折り曲げ可能になり、より柔軟なフォルムをつくれるようになるとのこと。これはAudiのデザイナーにとっても、創造の翼を広げる福音であることは間違いないだろう。

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同時にマトリクス・レーザーヘッドライトのデモンステレーションも用意されていた。明るさ・配光の優位性はもちろん、たとえばカーナビゲーションの進行方向に矢印を投影したりもできる。また、これはエンターテイメント的要素が強いが、Audiのフォルムをモティーフにしたアニメーションも投影することができる。

エンジニアによると、マトリックスレーザーの市販車投入は、前述の有機ELよりも、もう少し時間がかかるとのことだ。

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世界最大の家電・エレクトロニクスショーを舞台に展開されたAudiのブースは、ブランドの伝統的モットー「技術による先進」を、モーターショーよりも強く感じさせるものといえた。各担当の技術者と、より深い話ができるのも楽しい。

いっぽう現実の米国ではオール・マトリクスのヘッドランプが認可されていないばかりか、進行方向に向けて照射するアダプティブヘッドランプさえいまだ認められていない。「自動車技術の許認可に関していえば、米国は、欧州と比べて保守的」と、あるAudi技術者は証言する。

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「世界中の女性の首を、真珠で締めてご覧にいれます」とは真珠王・御木本幸吉の名言だ。Audiのエンジニアは、ラスベガスの街道を流れるおびただしい数のヘッドランプとテールランプを眺めながら、「いつか無数の有機ELとマトリクスレーザー付きAudiで、この街の路上を照らしてやる」と闘志を燃やしたにちがいない。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA, Audi)

大矢アキオ イタリアコラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒業。自動車誌『SUPER CG』編集記者を経てトスカーナ州シエナ在住。『イタリア発シアワセの秘密-笑って!愛して!トスカーナの平日』(二玄社)ほか著書多数。NHK『ラジオ深夜便』現地リポーターとしても十年以上にわたり活躍中で、老若男女犬猫問わず幅広いファンがいる。

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