110919-A2-07.jpg9月13日に開幕したフランクフルトモーターショー。アウディスタンドの目玉はコンパクトな実用EV「アウディA2コンセプト」だ!

(Photo by Audi AG and Audi Japan)
これまでアウディはフォルクスワーゲングループが一堂に会するホール3にスタンドを構えていたが、今回は独自の仮設ホールをつくり、われわれプレス関係者の度肝を抜いた。その様子は110919-A2-06.jpg
110919-A2-04.jpg110919-A2-03.jpg充電に要する時間は、400Vの急速充電なら約1時間半。家庭用の200Vなら約4時間でフル充電が可能だ。非接触型の充電装置にも対応し、プラグをつながなくても充電ができるのは便利だ。

外観でユニークなのが、ダイナミックライトと呼ばれるLEDのライン。フロントからリアに貫かれるこのラインは、サイドマーカーとして機能するほか、たとえばブレーキをかけたときには、赤い光の帯が前方に流れ、ブレーキの動きがイメージとして伝わりやすくなっている。

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見落とすわけにはいかないのが、A2コンセプトに搭載される"バイ・ワイヤ"技術。いまや、市販車でも、"ドライブ・バイ・ワイヤ"、すなわち、アクセルペダルとスロットルとが電気的にしかつながっていないシステムは当たり前だが、このA2コンセプトでは、ステア・バイ・ワイヤとブレーキ・バイ・ワイヤが採用されている。つまり、ステアリングホイールと実際に舵を取る装置、ブレーキペダルとブレーキがケーブルや油圧装置で結ばれていないのだ。

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もちろん、これまでにもバイ・ワイヤを搭載するコンセプトカーはたくさんあった。電気自動車のコンセプトカーのなかには、モーターを各ホイールに収め(インホイールモーターという)、各ホイールをバラバラに操舵することで真横に移動したり、その場でクルクルまわるといった、従来のクルマではできない芸当を見せるものもあった。それに比べると、A2コンセプトはワンモーター式のEVなので"カニ歩き"はできない。

では、なぜドライブ・バイ・ワイヤ、ステア・バイ・ワイヤ、ブレーキ・バイ・ワイヤなのか? そこにはアウディの近未来戦略があった。今後、大都市はさらに人口とクルマの集中が予想され、何もしなければ交通の状況は悪化するばかりだ。これを防ぐためにアウディは「アーバン・フューチャー・イニシアチブ」と題した取り組みを行い、未来都市のあるべき姿を模索している。

その研究のなかで見えてきたのが、自動運転の必要性だ。混雑した都市の道路を効率的かつ安全に大量のクルマを流すには、信号を使って流れを制御するのではなく、すべてのクルマの動きを制御するほうが格段に有利というわけだ。A2コンセプトの資料を見ると、低速で自動運転が可能と書かれている。これはアダプティブクルーズコントロールを用いた追従運転を意味しているが、将来はさらに広範囲での自動運転を実現しようと考えているのだろう。

だから、A2コンセプトの場合、バイ・ワイヤ技術そのものに感動はなかったが、将来の自動車のあるべき姿を想定したうえでバイ・ワイヤ技術の完成を目指しているアウディの先見性に感心したのだ。

過去を振り返ると、EVのコンセプトカーが内燃機関(ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン)を搭載して量産化されるパターンが多かった。「e-tron」の実用化が近づくいまのアウディでは、このA2コンセプトが内燃機関車とEVのどちらで登場してもおかしくない状況だ。ただ、A2の量産モデルが登場したところで、ステア・バイ・ワイヤ、ブレーキ・バイ・ワイヤの実用化はさらに先の話になるだろうが、単なる技術自慢ではなく、その技術の先にあるものを見せてくれたという点では、このA2コンセプトはとても意味があり、僕が今回のイチオシと考えたのも、そういった理由からである。

(Text by Satoshi Ubukata)

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