120624-Kiku.jpg不定期でコラムを連載することになりましたキクタニです。不定期というのは、文字どおり定期的ではないということでして、皆さんと共有して面白いと思える話題や新たな体験などがあったら、都度書いていきたいと考えています。 さて、第1回目はアウディについて思うことをつらつらと。

はじめてAudiを所有したのは、今から24〜25年ほど前のこと。ちょうどヤナセに入社して2〜3年経った頃です。もちろん新車なんかではありません。8年落ちぐらいの1980年式B2 80を格安で入手したのです。

伸び伸びとしたボクシーなボディは淡いブルーでした(カラーの正式名称は忘れた)。ごく細いステアリングは台形の2本スポークでノンパワー。やけに吹け上がりのいい1.6L 直4エンジンは3速ATと組み合わされていました。

当時、同時所有していたW123の1978年式メルセデス・ベンツ280Eと比べると、内外装はじつにシンプル。プラスティッキー感丸出しという印象でした。走りは、重量感があって重厚なメルセデスに対してAudi80は、軽快でスポーティ(速くはないけれど)。現代よりも明確に両ブランドのキャラクターは異なっていました。

アウディ80を購入する直前まで所有していた1984年式フォルクスワーゲンゴルフと、内外装のテイストや走行フィーリングはよく似ていました。オーディオやエアコンなどで共有するパーツが多かったので当たり前の話なのですが、私はいい意味で違和感なく乗り換えることができ、それはフォルクスワーゲンからアウディに乗り換えるお客様にとって重要なセールストークになるな、とも感じました。

日本においてアウディというブランドが認知されはじめたのも、ちょうどこの時期だと思います。先代のB1からヤナセでは正規輸入を開始していましたが、次第に景気が上向き始め積極的に輸入車を選択する人が一気に増えてきたのはB2以降のことでしょう。BMWがE30型3シリーズの発売を開始した頃とほぼ同時期にあたりますが、このE30型3シリーズは「六本木のカローラ」などと揶揄されるほど売れまくっていました。同じ頃、メルセデス・ベンツ190Eは「小ベンツ」と表現されたりしましたね。

でも、アウディに関してブランドを軽視するような表現を耳にしたことがありません。きっとアウディのユーザーは、他のブランドとはキャラクターが明らかに違っていたのでしょう。パパはメルセデス、ママとお嬢様はアウディ。ご子息はフォルクスワーゲンというヤナセのブランディング(というかヒエラルキー?)が成功したということも理由かもしれません。

当時のアウディは、エレガントで女性的なイメージが先行していました。とくにB3に乗る女性は田園調布か成城あたりに住む昔からのお嬢様......というイメージでした(あくまでもイメージですからね)。税金対策でガイシャを買って都心のマンションに住んだるっ......というキャラクターではなかったことはたしかです。そういえばヤナセの女子社員も多くはお嬢様だったのですが、B3所有率は高かったですねえ。

ヤナセではメルセデス・ベンツを扱っていた私ですが、知り合いや友人から「クルマを買い替えようと思うんだけどオススメは?」と聞かれたときに、アウディはとても勧めやすいクルマでした。なんといってもデザインが美しく高貴な雰囲気さえ漂わせ、街中では「掃き溜めに鶴」的な存在でした。だから、「素敵なクルマだよ、きっと似合う」この一言で、ほとんどの場合は即決でした。

常々感じていることですが、メルセデスやBMWに乗っていると「いいクルマですね」と褒められるが、アウディの場合は「いいクルマですね、いい趣味です」とか「いいクルマですね、お似合いです」と、乗り手に対する評価にひと言加わることが多いようです。

同じような意味ですが、クルマだけではなく選んだ人をも評価されるということはとても重要なことです。つまり、アウディに相応しい人が選んでいた。または、アウディの似合う人間に変わっていくということでしょう。アウディって、昔からそんなブランドなのです。

えっ、私ですか? 何台かアウディを乗り継ぎましたが、最後まで「いいクルマですね」だけで終わっていたようです。やはりそこはアウディ、昔から「乗り手を選ぶ」ほどのブランドなんですねえ(笑)

(Text by Satoshi Kikutani)

This article is a sponsored article by
''.