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【試乗記】アウディTTSクーペ
090814-TTS-01.jpgTTシリーズの最上級グレード「TTSクーペ」は、痛快きわまりないプレミアムコンパクトスポーツだ。

※写真はすべてヨーロッパ仕様。日本仕様とは異なる部分があります。

TTSの"S"は、「Sモデル」のエス。これまでのSモデルは、「S3」「S4」というように、シリーズ名の頭に来る"A"を"S"におきかえていた。しかし、このTTでは"S"の文字をシリーズ名のあとに付け加えている。名前こそ変則的だが、TTSはアウディ伝統のスポーツモデルなのである。ちなみに、究極のスポーツと位置づけられる「RSモデル」のTT版は「TT RS」を名乗る。 

ドイツ本国では、クーペとロードスターのふたつが用意されるTTSであるが、日本では2008年9月からクーペのみがプライスリストに加わっている。

090814-TTS-02.jpg一番の特徴は、そのエンジン。TTクーペ用の2.0 TFSIをベースとしながら、主要コンポーネントを新たに設計したTTS専用エンジンは、1984ccの排気量から200kW(272ps)、350Nm(35.7kgm)の圧倒的パフォーマンスを発揮。従来の2.0 TFSIに比べて、パワーで36%、トルクで25%の大幅アップが図られている。
これだけのハイパフォーマンスを受け止めるには、フルタイム4WDのクワトロは不可欠。それ以前に、Sモデルの伝統に則れば、2輪駆動はありえない! TTSクーペでは、2009年式以降のTT同様、最新世代(第4世代)のハルデックスカップリングを用いたクワトロを搭載。このシステムは、フロントアクスルには常にエンジンの駆動力を伝える一方、リアアクスルに伝えるトルクは、走行状況に応じて、リアデフ直前に置かれたハルデックスカップリングをコントロールすることで調節、常に最大のトラクション確保を目指している。

たとえば、後輪に大きな荷重がかかる発進時には、ハルデックスカップリングをほぼ直結状態にしてリアタイヤのグリップを最大限に活かし、また、ドライ路面の高速道路をクルーズするような場合には、リアアクスルへのトルク配分を最小限にして、燃費向上を図るという具合だ。

090814-TTS-03.jpg写真はヨーロッパ仕様のためマニュアルとなっているが、日本のTTSクーペのトランスミッションは、6段Sトロニック。ステアリングにはパドルシフトが装着される。
090814-TTS-04.jpgエクステリアでもノーマルとの差別化が図られていて、LEDポジショニングライト付きのバイキセノンヘッドライトや縦のクロームが強調されたシングルフレームグリル、お約束のアルミ調ドアミラーカバーなどが、Sモデルであることを主張している。
なあんてことを書き連ねると、TTSクーペがとてもスパルタンなクルマのように思えるだろう。しかし、そんな心配とは裏腹に、TTSクーペは拍子抜けするほど快適なスポーツカーだった。 

深いサイドサポートを持つスポーツシートに身を委ねると、標準のTTクーペでもその端正さに目を奪われるインテリアは、各所に施されたレザーの装飾などが利いて、さらに魅力的に見える。この美しさ、クオリティは、たとえばポルシェのケイマン/ボクスターを凌ぐ仕上がりといえる。

さっそくエンジンを始動して、まずはゆっくりと走り始めると、スポーツモデルとは思えないほどにマイルドな乗り心地に驚いた。TTSクーペは連続可変ダンパーシステムの「アウディ マグネティックライド」を標準装着。常時、最適な減衰力をもたらすとともに、ノーマルとスポーツのふたつのモードが用意して、ドライバーの要求に応えてくれる。ノーマルモードでは、スポーツカーらしいシャキっとした動きを維持する一方、245/40R18タイヤの動きを抑え、直接的なショックを巧みに遮断してくれるから、街乗りでもガマンは無用だ。

アクセルペダルを控えめに踏むかぎり、低回転域では穏やかな動きを見せるTTSクーペだが、2000rpmを超えたあたりからはトルクの盛り上がりが実感できるようになり、レスポンスの良さも目立ってくる。アクセルペダルを軽く踏み込むと、太いエギゾーストノートを伴いながら、すうっとスピードを上げるし、ここぞという場面でフルスロットルをくれてやれば、背中を押されるような鋭い加速を味わうことになるだろう。レブリミットの6800rpmまで引っ張って、スパッとシフトアップするSトロニックの腕前も素晴らしい。

もちろん、TTSクーペは"直線番長"ではない。アルミとスチールのハイブリッド構造を採るTTSクーペの軽量高剛性ボディは、後半にスチールを配置することでフロントアクスルの荷重を減らし、さらに、6気筒ではなく、あえて4気筒を採用することで、フロントヘビーになるのを避けている。おかげで、コーナーでは優れたステアリング操作にあわせてスッと向きを変えるし、ボディが軽く、重心が低いこともあって、ロールの安定感も抜群だ。アウディ マグネティックライドをスポーツモードに切り替えれば、さらに踏ん張る印象である。

コーナーの出口でアクセルペダルを深く踏み込むと、荷重の乗ったリアアクスルに瞬時に大きなトルクを伝えるクワトロのおかげで、高いトラクションを保ちながら、狙ったラインがトレースできる。ハイパワーなFFモデルでは、なかなかこうはいかないだろう。

つまり、TTSクーペは、ふだんの快適さと、スポーツドライビングの楽しさが1台で手に入る、類い希なるクルマなのだ。

090814-TTS-05.jpg価格を見ると、ひとクラス上のスポーツカーが狙える金額だが、このサイズだからこそ得られる痛快さは、何物にも代え難い。しかも、TTならではの冴えわたるデザインには惚れ惚れするばかり......。僕にとって、このTTSクーペがアウディNo.1の座を譲ることは、当分ないだろう。

(Text by S.Ubukata)
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