090819ogu001.JPGGTIカップの第2戦が8月16日、富士スピードウェイで開催された。結果は既報済み。参戦リポートは、丸山さんがいま暗くなりつつも頑張って執筆中、多分・・・
そこで、オグラは現在のGTIカップのルーツとなる、ゴルフ3のカップカーがどんなクルマであったかを、この機会にお伝えしよう。それはNゼロ規定を満たすために、涙ぐましい努力が払われたクルマだった。
090819ogu002.JPG■コックス製レーシング・トイ
ここに登場するのは、'00年からスタートしたフォルクスワーゲン・レーシング・カップに実際に参戦したカップカー。このレーシング・カップ、基本的にはNゼロ規定をクリアするよう改造され、V.T.A.(フォルクスワーゲン・トロフィ・アソシエーション)による事前車両検査をパスしたクルマならば、出走が可能だった。とはいえ、'00年はやはり、コックスのRT(レーシング・トイ)を購入し、参戦する人がほとんどだった。RTには、コックスが用意したレース用のパーツが揃っていて、それを装備してNゼロ規定を満たすという方法が、最も簡便なマシン作りだったからだ。

090819ogu008.JPGレーシング・カップの規定は、毎年少しずつ変化してきたが、大筋は変わっていない。たとえば、ナンバー付きワンメイクの大前提としては、エンジンのチューニングは御法度というのがある。なにもやっていないことを確認するために、事前車両検査でパワーチェックが行なわれる。オッケーとなれば、今度は封印されて、いわゆるメンテナンス以外はまったくできなくなる。せいぜい変更が許されたのは、ホイールや車高調を使うサスペンション、そしてタイヤの空気圧程度。これは、ほかでもない、クルマはイコールコンディションで、ドライバーが自身のウデ、ドライビングテクニックで速さを競うというワンメイクの理念に基づくもの。現在のGTIカップもそうだが、当初から厳格な運営がなされているのだ。

090819ogu005.JPGNゼロ規定を簡単にいってしまうと、N1の安全規定に基づく車両を、ごく短い時間で確実に保安基準適合車両に変身させられるよう考えられた規定。マシンを、色々なパーツをワンタッチとはいわないまでも比較的簡単にで脱着できるように、あらかじめそれがやりやすいように作っておくというのがポイントだ。

'99年9月15日に開催された"フォルクスワーゲン・モータースポーツGTIカップ"では、保安基準適合検査記録簿というのがあった。レース後、公道を走るための車検を行なうためのチェックシートで、項目としては次の10項目があった。

①前後ナンバープレートの取り付け
②灯火装置類に貼付した飛散防止夕食テープの除去
③フロントウインドー上部のレース指定のボルダーテイント(カッティングシート)除去
④突起物となる前後牽引フックの取り外し
⑤一般公道走行に安全な最低地上高の確保
⑥タイヤの残り溝
⑦ブリーザ-ホースの接続(オイルキャッチタンク→エンジンブリーザーパイプ)
⑧サーキットブレーカー操作ワイヤーの取り外し(キルスイッチが作動しないこと)
⑨バッテリーターミナルを固定するテープ類の除去
⑩車検証に記載の乗車定員分の座席確保

これらの項目の検査は、フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンが派遣する技術員立ち会いのもとで行なわれ、これをパスしたクルマのみがサーキットから出る、つまり公道を走って帰ることが許された。現在は、"公道車検"と呼ばれている検査の原型である。

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涙ぐましい努力が払われたと感じられるのは、項目の⑩。車検証に記載の乗車定員分の確保、だ。ゴルフ3のGTIの乗車定員は5人。Nゼロといってもロールケージの装着は義務づけられるから、もちろん取り付けるわけだが、この時代はまだ、リアシートを取り外さなければ装着できなかった。そこで考えられたのが、ロールケージの後半部分を簡単に脱着できるようにすること。この後半部を装着しない状態、つまりリアシートを付けた状態でサーキットにやってきてロールケージ後半部を装着。レースが終わると、公道を走行できるように、このロールケージ後半部を外し、リアシートを取り付けるのだ。ロールケージの後半部を外すと、ロールケージのメインバーにそのステーが残ってしまうが、これは突起物と見なされるため、そこにはカバーを取り付けなければならない。結構タイヘンだが、これで公道を大手を振って走って帰れるならばなんのなんの。

090819ogu007.JPG現在のNゼロ規定のマシンは、この問題をクリアするため、ロールケージを巧妙に作っている。リアシートの脱着作業を省略するため、ロールケージをルーフのサイドに寄せ、かつフロアの取り付け部は後方のトランク部として、リアシート空間を確保している。ほぼ10年を経過して、Nゼロ規定のクリアの仕方も洗練されてきたわけだ。

090819ogu003.JPG撮影したカップカーは、当時(おそらく'03年あたり)の、スポンサーのステッカーやカッティングシートが、ほぼそのまま残る。欠品があるにせよ、エンジンはノーマルのままで、ここまで当時の状態が保たれているカップカーは希少。やや大げさにいわせてもらうと、日本のフォルクスワーゲンのひとつの文化遺産として、長く残していきたいものだ。イヤ、残すべきだと思う。

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