171012-Polo-00.jpgフルモデルチェンで6代目に生まれ変わった「ポロ」を、モータージャーナリストの大谷達也さんが試乗。1L 3気筒エンジンの1.0 TSIを積んだ新型ポロの出来映えは?
キレのいいキャラクターライン。シンプルだけれどいかにも面精度の高そうなボディパネル。そして安定感溢れるプロポーション。6代目に生まれ変わったポロのスタイリングは、どこからどう見てもフォルクスワーゲンそのもの。

でも、そのボディサイドに日本刀の切っ先を思わせるトルネード・ダブルラインを刻み込んだり、ヘッドライトの下側を縁取るようにして微妙に波打つLEDデイタイムランニングライトを組み込んだりして、新しさや躍動感を表現している。最新世代のモデルであることは一目瞭然である。

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でも、そうしたデザイン・モチーフ以上に新型を強く印象づけているのが、ひとまわり、いやふたまわりほども拡大されたボディサイズかもしれない。なにしろ、先代に対して全長は4053mm(+81mm)、ホイールベースは2548mm(+92mm)に延長されただけでなく、全幅は一気に69mmも拡大されて1751mmとなり、ついにポロも3ナンバーをつけることになったのだ。

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駐車スペースの関係でこの"成長"を受け入れられない方々には誠に申し訳ないが、サイズ拡大が新型ポロにさまざまな面で恩恵をもたらしているのは事実。たとえば、全高はこれまでより7mm低くなったのにヘッドルームはフロントで15mm、リアで21mmも広がったほか、荷室容量は71Lも増えてクラス最大の351Lとなった。

いっぽう、実際にキャビンに乗り込んでもっとも強く感銘を受けるのは室内幅が大きく広がったことだろう。なにしろ、これまではなんとなく肩をすぼめるようにして乗っていたものが、新型では肩の力を抜いてゆっくりとリラックスできるくらい、広々としているように感じられるのである。

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こうしたボディサイズ拡大は、ヨーロッパにおけるBセグメント市場の動向を見渡せば当然の判断といえる。

現在、このカテゴリーでもっとも売れているのは「ルノー・クリオ」で、われらがポロはモデル末期ながらこれに続く2位と健闘。さらに「フォード・フィエスタ」「オペル・コルサ」「プジョー208」「シトロエンC3」と続いていくのだけれど、このなかで全幅が1700mm以下なのは5代目ポロのみ。それ以外の5モデルは1732〜1750mmに収まっているのだ。さらにいえば全長も4m越えがいまや主流だし、ホイールベースにいたっては2500mm級が目白押し。

こういった強豪たちと争うためにも、ボディサイズの拡大は新型ポロにとって避けて通れない命題だったのである(諸元はいずれもヨーロッパ発表値)。

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6代目ポロのもうひとつのニュースが、ゴルフ7で世に出たMQBの採用である。正確には、同じMQBでもBセグメント用にサイズを調整されたMQB A0(A0はフォルクスワーゲン・グループ独自のセグメント分けで、一般的なBセグメントに相当する)となるのだが、基本となる技術は共通。試乗会に出席したエンジニアによれば、目立った違いは遮音材を多少省略した程度というから、乗り心地、ハンドリング、ボディ剛性感といった面では兄貴分のゴルフと同等の仕上がりが期待できる。

さらにいえば、運転支援装置を含む装備品の充実度もゴルフに近いレベルになるはず。そうしたファンの予想というか希望がほぼかなえられていることは後述するとおりである。

前置きが長くなりすぎた。そろそろ試乗車のスペックをご紹介しよう。本国ではガソリン、ディーゼル、天然ガスを燃料とする9タイプのエンジンが用意されるが、とりあえず日本に入ってくるのはガソリン 3気筒 1.0Lターボの1.0 TSI(95ps)+7速DSGの1種類のみとなる見通し。私たちがドイツ・ハンブルグの国際試乗会で乗ったのもこれとまったく同じ仕様だった。

走り始めて最初に感じたのは、乗り心地がやや硬めなこと。といってもショックの角はきちんと丸められているし、ボディ剛性が高いので決して不快なわけではない。むしろ古き良き時代のドイツ車を思わせる歯切れのいいもので、クラスを越えたどっしりした印象を与えるといっても言い過ぎではない。

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もっとも、この辺はタイヤの影響も強く、最初に試乗した215/45R17サイズよりも後で試した195/55R16サイズのほうがハーシュネスは軽め。ただし、銘柄違いのため16インチは乗り心地のダンピング性能が低く、グリップ性能や静粛性の面でも17インチに大きく劣っていた。ちなみに17インチはミシュラン・プライマシー3で、16インチは日本の某社製。したがって16インチのプライマシー3があったら理想的なバランスだったかもしれない。

ハンドリングはフォルクスワーゲンらしく安定感に溢れるもの。今回は小雨が舞い散るアウトバーンで180km/h巡航も試したが、こういった状況でもまったく不安を覚えずにステアリングを握っていられるところに、フォルクスワーゲンの、そしてMQBの底力が現れているといっていいだろう。

180km/hで巡航できるくらいだから動力性能に不満があるはずがない。加速がとりたててシャープということはないが、その気になれば高速道路への流入でも信号待ちからのスタンディングスタートでも周囲をリードするくらいのダッシュ力を発揮できる。つまり必要にして十分なパワーを備えているというわけだ。

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個人的にちょっと気になったのが、3気筒特有のビート感がときおり現れる点。回転数でいうと1500rpm前後の低回転域と4000rpm以上の高回転域でトゥルルルル......というノイズとともに軽いバイブレーションを感じることがあった。

ただし、この辺は個体差もあって、ある1台は低回転域で、別の1台は高回転域でその傾向が顕著だった。裏を返せば、同じ回転域で騒音や振動を感じさせない試乗車もあったので、問題の解消がまったく不可能というわけでもなさそうだ。日本上陸までに改善されていることを期待したい。

いっぽうで、装備品の充実振りは目を見張るばかり。特に印象的なのが運転支援装置の豊富なことで、シティエマージェンシーブレーキ&歩行者検知機能付き"Front Assist"、アダプティブクルーズコントロール、リアトラフィックアラート付きブラインドスポットディテクション、パークアシストなどが目白押し。

また、デジタルメータークラスターの"Active Info Display"や8インチ・ディスプレイ搭載のインフォテイメントシステム"Discover Pro"もラインナップされている。これらのうち、どの程度までが日本仕様で採用されるかは不明だが、Bセグメントの常識を打ち破る豊富な装備が用意されることはまずまちがいないだろう。

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内外装の質感も高い。とりわけ、ボディカラーと同色のフェイシアが貼られたダッシュボードまわりは各パーツの精度感も高く、クラスを越えたクォリティ感を味わえるはずだ。

サイズが拡大し、走りが磨かれ、装備品が豊富になり、質感がさらに向上した新型ポロは、これまでどこかで"ガマン"を強いられてきたBセグメントとは一線を画す、新たなクラス感を持ったコンパクトカーといえる。

6代目ポロの日本導入は2018年の夏頃。最高出力200psの4気筒 2.0Lエンジンを積むポロGTIも追って上陸するはずだから、こちらも楽しみだ。

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(Text by T.Otani)

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