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【試乗記】XL1〜後編
160929-XL1 N-3.jpg250台限定のスペシャルカー「XL1」でドライブに。コンパクトなカーボンボディとディーゼルプラグインハイブリッドが生み出す走りとは?

※前編はこちら
※ギャラリーはこちら

1665mmの全幅は、いまどきのフォルクスワーゲンとしてはとてもコンパクトに思えるはずだが、全高が1153mmときわめて低いせいか、むしろスーパースポーツのような迫力が伝わってくるXL1。ドアの開き方もスーパースポーツ並みの派手さで、慣れるまでは少し気恥ずかしい。実際、走っていても、停まっていても、このクルマの注目度はきわめて高い。

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いざ乗り込もうとすると、サイドシルの幅広さに気づく。カーボンモノコックのXLだけにCFRPが剥き出しかと思いきや、アクセスの際に引っかかりそうな部分はカーボン調の保護フィルムが施されているので、多少気が楽だ。サイドシルとシートのあいだにあるクロームのレバーがドアハンドルで、ドライバーからは操作しやすい位置に配置されている。一方、後方にオフセットした助手からはやや遠く、また、ドアも遠いために開け閉めには一苦労。大切な人を乗せるのであれば、ドアの開閉はドライバーの務めだろう。

乗り込んで最初に戸惑ったのが窓の開閉だ。外から見ただけでも開くのは下半分だけと気づいていた。しかし、いざ操作しようとすると、窓の開閉スイッチが見あたらないのだ。

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聞けば、ドア内側に手動式のドアハンドルが隠れているとのこと(写真左下)。回せば、なんとも懐かしい感触だ。これも軽量化のためと思えば苦にならない。パワーウインドーの経験しかない若者には新鮮かもしれない。

もうひとつの戸惑いが収納スペースの狭さ。運転席後方に手荷物が置けるちょっとしたスペースはあるものの、まとまった荷物が乗せられるのはパワートレイン後方だけ。ただし、ふだんここには充電器が収まり、それだけでほぼ満杯の状態だ。

途中で充電する予定はないので今回は充電器を降ろした。これで、小型のキャリーケースがぎりぎり2個収まるほどのスペースが現れ、撮影機材を収納。荷室のサイズもスーパースポーツ並みである。

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運転席は前後スライドは可能だが、シートのリクライン調整はできない。ステアリングコラムはテレスコピックのみ調整が可能だ。それでも無理のないドライビングポジションが取れるのはうれしいところだ。セミオートとはいえエアコンが装着されているのも助かる。

シンプルなメーターパネルは、見覚えのあるデザインだ。どうやら「up!」のメーターをベースにXL1用に手を加えているようだ。

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160929-XL1-20.jpgただ、複雑なプラグインハイブリッドシステムをモニターするには情報量が不足しており、それを補うために地図表示が可能なディスプレイがダッシュボード上に配置されている。ここで、燃費や平均速度、航続距離、エネルギーフローなどが確認できる。
ちなみに、エアコンの操作パネルの下には、日本で取り付けられたモニターが置かれている。これは地図を確認するためというよりも、後方の視界を確保するためのものだ。

リヤウインドーがないXLにはルームミラーがないし、あったところで無用の長物である。それだけに後方を確認するのが難しく、やむを得ずリヤカメラを装着してこのモニターに映し出しているというわけだ。

サイドミラーのみならずルームミラーもない完全ミラーレスの環境にも戸惑った私は、はじめのうちは誘導なしではクルマを後退させられなかった。いきなり未来がやってくるのも考えものである(笑)

さて、システムの起動は、ブレーキペダルを踏みながらステアリングコラム脇のボタンを押すだけ。すぐにエンジンがかからないのは、愛車の「ゴルフGTE」と同じである。そういえば、このクルマにもエレクトロニックパーキングブレーキが備わり、走り出すまでの"儀式"はゴルフGTEとそっくり。

シフトレバーをDのポジションに引き寄せ、ブレーキペダルから足を離すと、XL1はゆっくりと動き出した。現行のゴルフに慣れ親しんでいる人なら、何の予備知識もなく、簡単に動かせるのは、さすがというべきだろう。

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走り出しは電気モーターが担当。その出力は20kW(27ps)で、up!の1Lエンジンの4割以下と控えめだが、一方のトルクは100Nm(10.2kgm)とup!のそれを上回っている。低回転から強力なトルクを発揮する電気モーターは、車検証の車両重量が860kgのXL1を走らせるには十分の実力を持ち、その加速には余裕すら感じられる。

まわりの流れを乱さないようアクセルペダルを踏むと、20km/h程度で2気筒ディーゼルが目を覚ます。まわりにクルマがいない状況でのんびりと加速を試みると、40km/h、場合によっては60km/hくらいまで電気モーターだけで速度を上げてしまった。

パワートレインがキャビンの背後に配置されることもあり、エンジン音はそれなりにボリュームがあり、動き出せばすぐに気づくレベルだ。エンジンがオンの状態では、電気モーターのアシストもあって加速にはさらに余裕があり、とくに3000rpmを超えたあたりからは力強さを増していく。高速道路の合流や追い越し、あるいは登り坂といった場面でも実に頼もしく、「エコカーは走らない」というイメージはこのXL1には当てはまらない。

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一般道でも高速道路でも、目的の速度に到達し、アクセルペダルを緩めるとすぐにエンジンはオフに。そこから軽く加速する程度なら電気モーターだけで十分事足りるし、必要とあらば即座にエンジンが再始動する。その素早さや、エンジンを停止する頻度はゴルフGTEを上回るほどで、これが低燃費に大きく貢献しているのは間違いない。シフトの素早さやスムーズさも目を見張るほどで、シングルクラッチのASGではなく、デュアルクラッチのDSGを搭載したのは大正解だ。

驚いたのは走行抵抗の低さ。Dレンジで走行中にアクセルペダルから足を離し、ブレーキを踏まない状態では、いわゆる"コースティング"の状態となり、XL1は惰力で走行を続けるのだが、その際の速度の落ちがとても緩やかで、このクルマがいかに走行抵抗が低いかを思い知らされる(Sレンジでは回生ブレーキが効く)。

最近のゴルフにもコースティング機能はあるが、緩い下り坂ですら次第に速度は落ちていくことが多いのに、このXL1は電気モーターやディーゼルエンジンの力を借りずにスピードを維持できる。しかも、プラグインハイブリッドの場合はエンジンが停止するので燃料の消費はゼロだ(エンジン車のゴルフはアイドリングしているので、燃料消費はゼロではない)。ここにも低燃費のカギがあった。

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XL1の乗り心地はやや硬めだが、快適性は十分に確保されている。目地段差を超えたときのショックなども、剛性が高く、軽量なボディのおかげで上手にいなす印象だ。フロントタイヤが115/80R15と細いのでスタビリティが心配だったが、高速の直進安定性もまずまず。ワインディングロードを攻める機会はなかったが、ふだん運転するうえでハンドリングに不満はなかった。

ただし、軽量化のためかパワーステアリングが装着されず、低速でステアリングを操作する場面では多少苦労することも。それでも、タイヤが細く、車両重量が軽いおかげで、ゴルフ1の時代よりはだいぶマシである。

気になる燃費は、標高差のある高速中心のルートを2名乗車、エアコンオンで走り2.4L/100km=41.7km/Lという数値。とくにエコランを心がけたわけではないので、積極的に電気モーターを使う走り方をすれば、簡単に燃費は上がるだろう。

ちなみに、ドライブの途中で燃料警告灯が点灯したため給油(もちろん軽油だ)したところ、ほぼ満タンで10L弱。これだけの燃料で軽く4〜500km、上手く走れば1000km行けるというのは感動モノだ。

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実際に運転してみると、想像とは違って、とても扱いやすく、快適なドライブが楽しめたXL1。走りの楽しさを失うことなく、低燃費という性能をとことん究めたという意味で、私はXL1を新しい時代のスーパーカーと呼びたい。スーパースポーツにも負けない特徴的な佇まいも、そう思わせる一因である。

今後フォルクスワーゲンから、このようなクルマが再び生まれてくるかどうかは疑問だが、それだけにこのXL1がフォルクスワーゲンの歴史に残るエポックメイキングなクルマとして語り継がれることは間違いないだろう。

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そのDNAが愛車のゴルフGTEに受け継がれていると思うと感慨もひとしおである。

(Text by S.Ubukata / Photos by M.Arakawa)
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